
新年、明けましておめでとうございます。
今回のお休みは3年ぶりに行動制限がないだけでなく、曜日のめぐりあわせで、幼稚園では例年より長いお休みとなりましたので、ご家族で有意義に過ごされたことと存じます。子ども達にとっても、クリスマスにはサンタさんからのプレゼントを頂いたり、年の暮れには大掃除、そしてお正月を迎えると、それまで慌ただしく過ごしていたご家庭でも、いつもよりゆったりとした時間が流れ、ご馳走を囲んでゆっくりと団らんを楽しんだり、家族で一緒にテレビゲーム、かるたやトランプをしたり、あるいは初詣や実家への帰省など日常とは違った時間が流れたのではないでしょうか。そこでは子ども達は幼稚園の経験とはまた違う、家族との濃密な時間が持てたことで、思い出深い経験や学びがあったことと思います。またそれは必ずしも余暇の時間だけではなく、お正月の支度を進める雰囲気を感じたり、そのお手伝いをすることで家族の一員としての役割を感じたりなど、新しい気付きや自立への機会があったはずです。経験を通しての学びには新しいことを“知る”という事もありますが、同時に“感じとる事”とも言えるのではないでしょうか?先祖のお墓参りや氏神様に初もうでに出かけ、一年間無事に過ごせたことへの感謝の気持ちを伝えたり、新年にあたり家族の無事を祈念するために手を合わせたりする様子を脇でじっと見ている我が子は、いったいどんな思いで親や身近な大人の姿を見ているのでしょうか。その場に一緒にいれば、親の行動を見てそのやり方やおおよその意味は何となく理解しているかもしれません、しかしそれが自分や家族への深い愛情に基づく行為なのだと理解するには、まだ幼く難しいかもしれません。人の行為には一つ一つ意味や感情がこもっているという事、また人は自分の行動に意味を持たせたり、心を込めたりすることが出来る、という事が子ども達に伝わっていくには、日常の何気ない大人の行動や行為の姿に寄ることが大きいと感じています。
日本の街は清潔で街中にごみが散らかっていないこと、信号を守ること、順番を待てること、治安が良く安全であることなどを外国の人から認められることがありますが、こんな当たり前の日常生活の中の規範意識は、昔から大人が範を示してきた社会の習わしや環境があったからこそ、子ども達に伝わっていくことではないでしょうか。ところが、最近車で走っていると、信号が黄色から赤に変わりそうなとき、右折車が待っていることが分かっていても、横断歩道で渡っている人がいても、場合によっては赤信号になってでも、我先にと車を動かし譲れない,相手の状況に気づけない大人がとても多いと感じています。子ども達の安全を考えても、大人として範を示す行動がとれているとは思えません。もしくは人との調和をはかる感性が育っていないのか、疲れて心が擦り切れてしまっているのでしょうか。穏やかで成熟した未来社会を築くためにも、子どもたちの目の前にいる私たち大人の日常の振る舞いが問われているのだと考えます。
さて、幼児期の子どもは未分化の時代と言われています。風に揺れる花びらや蜜を吸いにやってくる昆虫を見ている時、子どもの心は、それを単なる対象物として客観視するのではなく、そのものの中に自分を同化させることができる豊かな感性を働かせることが出来るのです。少し大きくなって知識や客観性が育ってくると、この想像力豊かな感性は表には見えにくい心の中にそっとしまわれてしまうのですが、それは失われる訳ではありません。豊かに育った感性は、心の中で知性や理性と共存し響きあいながら、ぐんぐん大きく育つものだと思います。だからこそ幼児期の教育には、自分で感じて知っていく経験、子どもの感性に響く教育が大切であり、そのために社会や大人がどんな環境を用意できるかが重要なのです。
もう一点お伝えしたいのは、今月20日に午前保育をお願いし、公開保育と小学校教育への連携を学ぶ研修会を行うことについてです。当日は國學院大學で幼児教育と小学校教育の連携について研究をされている吉永安里先生を始め、厚木市教育委員会の先生方にもご協力いただき幼児教育の果たす役割と小学校教育への滑らかな移行をどのように図っていったらよいのかを学び合いたいと考えております。また、市内外の幼稚園、保育園の先生達や市内の小学校の先生方も大勢参加される予定です。姉妹園のはやし幼稚園の教職員も交え有意義な研修にしたいと考えております。緑ヶ丘学園としても、幼稚園教育要領が改訂されるたびに小学校へのつながりをどう考え図っていくべきかを、長年試行錯誤してきた経緯もあり、幼児教育を正しく理解して頂くことで新しい小学校以降の学習指導要領への問題提起も図れるのではないかと考えております。今回の研修で、それぞれの立場から、お互いを理解し合うことで子ども達の未来に、確実で健やかな成長を望める足がかりとなればと考えております。
最後に、今学期は1年の締めくくりの学期になりますので、子ども達一人ひとりが、更に充実した園生活を送れるように教育的な環境を整えていきたいと思っています。そして、3月にはそれぞれが自信と期待をもって卒園・進級できるように一日一日の日常を大切にして参ります。
保護者の皆様には、今学期もこれまで同様にお力添えを頂きたく、よろしくお願いいたします。